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藁の上からの養子

 今回は「藁の上からの養子」というテーマを取り上げます。「わらのうえからのようし」といわれてもいったいどういう内容なのか、よくわかりませんね。これは虚偽の嫡出子出生届を役所に提出することで親子関係が生じるケースのことです。いろいろな事情で親族から子供を譲り受ける形で虚偽の出生届を出し、実子として育てる例がありました。戦前にはこういう例があったようです。ここでいう「わら」とはお産をする寝床に敷くわらを指しているのだそうです。

この出生届は実の親子関係の実態が伴わないという意味では無効であり効力を認めない、というのが確立した裁判例でした。そうすると、先の出生届のままでは出生届として無効とされる可能性があるばかりか、そのままでは養子縁組の要件も満たさないので養子としても迎え入れることができず結局「藁の上の養子」のままでは相続人となれる可能性が閉ざされてしまうことになります。ですから、戸籍上の両親との間では養子縁組を結ぶことができないので、最悪の事態に備えて、別の人物との間で養子縁組を結んでおくということも行われていたようです。

 このように別途養子縁組を結べた場合はまだよいのですが、そうでない場合はやっかいなことになります。親子関係が険悪になったり、兄弟姉妹間で遺産相続の問題で揉めたりしますと、藁の上からの養子が法的な問題として顕在化します。具体的には親族から親子関係不存在確認請求訴訟を提起されると、一般的には判決で「藁の上の養子」と戸籍上の親子との間の親子関係が存在しないことが確定されてしまうのです。

 しかし虚偽の出生届に端を発したとはいえ長期にわたり親子同然の生活をしてきて、相続の問題が発生したとたんに、判決で親子の関係が閉ざされる、というのは割り切れないものがあります。だからでしょうか。平成18年以降「藁の上からの養子」を被告当事者とする親子関係不存在確認請求事件について、親族からの請求を権利濫用を理由に排斥した最高裁判例が3件続きました。(平成18年7月7日最高裁判所第2小法廷判決民集60巻6号2307頁、平成18年7月7日最高裁判所第2小法廷判決家裁月報59巻1号98頁、平成20年3月18日最高裁第3小法廷判決判例タイムズ1269号127頁) しかし、その後の下級審判決では同種事案で親子関係不存在を認めたものもあるようですし、現時点では「藁の上の養子」について虚偽の出生届として無効とする前提論は変わりないようです。

 先の最高裁判例は権利濫用が認められる判断基準として以下の内容をあげています。

・戸籍上の両親と戸籍上の子との間に実の親子同様の生活実態のあった期間がどれだけあったか

・判決をもって実親子関係の不存在を確定させることにより戸籍上の子及びその関係者の被る精神的苦痛経済的不利益の程度

・改めて養子縁組の届け出をすることにより戸籍上の子が戸籍上の両親の嫡出子としての身分を取得する可能性があるか

・訴訟を提起した原告が実親子関係の不存在確認請求をするに至った経緯及び請求をする動機目的

・実親子関係が存在しないことが確定されないとした場合に原告以外に著しい不利益を受ける者の有無                 

以上の5点です。

今後判例理論がどのように推移していくのか、裁判所が実態をどのように評価していくのか注目していきたいですね。戸籍上の子は事情を何も知らずに育ってきたわけですし生みの親の事情で複雑な親子関係が生じたわけですから、子供の立場に立った解決策を考えてあげるべきでしょう。戸籍上の子に選択権を与えるということも考えてもいいような気もしますが、記載内容を形式的に判断して法的安定性を保つということが戸籍法の趣旨だとすると選択権を与えるということは難しい判断になるかもしれませんね。

Takeshi Ishinabe

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