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戸籍上死亡したことになっていた依頼者

 戸籍上死亡したことになっている依頼者が、私の事務所に法律相談にやってきた。しかしその依頼者はそのことを知らない。

依頼者Aさんは都内の某所で日雇い労働者の仕事をしていましたが、仕事が激減し、月の収入から家賃を引くとほとんど生活費が残らない、このままでは生活ができないというので、生活保護の申請手続の依頼を私にしてきました。

 そこで生活保護申請手続に必要な書類の入手手続に入ったのですが、取り寄せた戸籍謄本には驚くべき事実が記載されておりました。Aさんは除籍扱いになっており、戸籍上は死亡したことになっていたのです。その戸籍を見るとAさんの親族が失踪宣告の申し立てをしており、失踪宣告が確定し、その7年前に死亡したものとみなされたことになっていたのです。Aさんは30年以上も前から親族と連絡を絶っており、住民票も実家の住所のままだったため職権で抹消されていました。住民票も抹消され戸籍上死亡したことになっていた状況ではAさんの生活保護の申請などできるはずもありません。

 では今回なぜAさんの失踪宣告の申立が行われたのでしょうか?理由としては次のようなことが考えられます。Aさんが実家と連絡を取らず、所在不明のままかなりの時間が経過し、その後Aさんが相続人として関わってくる親族の相続問題が発生した。しかしAさんが生存しているままだとAさんの所在を突き止めない限り相続手続が進められない。そこでその他の相続人によりその後の相続手続を迅速に進めるために、Aさんの失踪宣告の申し立てを行った。

 ここで失踪宣告の制度について簡単に説明しておきます。これは不在者、生死不明の者(死体が確認できていない者など)を死亡したものとみなし、その者に関わる法律関係を一旦確定させるための制度で、民法30条31条に規定があります。民法30条1項は「不在者の生死が7年間明らかでないときは家庭裁判所は利害関係人の請求により失踪の宣告をすることができる」(通常の失踪の場合)と定めております。このような失踪宣告が行われますと、通常の失踪の場合、失踪期間7年が満了したときに、死亡したものとみなされ、そのこと(失踪者の死亡)を前提に法律関係が確定することになります。

 Aさんに以上の説明をしましたが、戸籍の記載内容が全く理解できない様子でした。そりゃそうでしょう、自分が生きているにもかかわらず、戸籍上死亡したものとして扱われているのですから。しかし、依頼されている生活保護の申請手続の前に、しなければならない法律問題があることは理解してもらいました。その上で、戸籍上死亡したことになっているAさんの戸籍を復活させることをまず行うことが必要で、そのための法的手続は失踪宣告の取り消しの申立であることを説明し、Aさん了解のもとで東京家庭裁判所に申し立てをしました。

 申立から約1か月後に家庭裁判所の調査官から呼ばれ、Aさんになぜ実家に帰れなくなったのか、これまで住民票や戸籍がいらない生活ができたのか等といった点について聞き取り調査をしました。さらに1か月後に再度Aさんと私が再度裁判所に出頭することになりました。この日は失踪宣告の申し立てをした親族にも裁判所に出頭してもらい、失踪宣告の申し立てをされた人物と今回失踪宣告の取消の申し立てをしている人物が同一人物かどうかを確かめてもらうために開かれた期日でした。親族によるAさんの人物確認をすることで、全ての手続は終了したのですが、Aさんは親族と数十年あっておらず、親族同士でなければできない話もあるかと思い、私が同席するのは無粋と判断し、当日の手続終了後、私は席を外すことにしました。その後しばらくして失踪宣告取消の審判が確定し、Aさんは無事生活保護を受ける事ができるようになりました。

 生活保護の受給申請手続のみを行う予定が、失踪宣告の取消という想定外の手続まで行うことになったのですが、住民票や戸籍とは無縁の生活を長期にわたり行っているとこのようなことが起きるのかもしれません。 

 今回のケースでは議論になりませんでしたが、失踪宣告により一旦死亡したとみなして確定した法律関係が、取り消されたということになると元の法律関係に遡ることになります。しかし法律関係を全面的に覆すということになると、事情を全く知らずに法律関係に関わった人に不測の損害を与える可能性があります。そこで民法では2つのことを定めています。第1に失踪宣告からその取消までの間に行われた善意の行為(これは。本当は生存していたということを知らずになされた法律行為のことをいいます)の効力には影響を及ぼしません(民法第32条第1項後段)。第2に失踪宣告によって財産を取得した者については、失踪宣告の取消によって、遡って権利を失うことになりますが、現存利益、つまりその時点で残っている範囲で返還すれば足りるとされています(民法第32条第2項)。これらの点についてはいずれ別の機会に詳しくお話しします。

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